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破天蒼月

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□ 破天蒼月(小説) □

月下の舞姫17

目の前に現れたゾンビ達は明らかに異質だった。腐った肉の上に艶やかで煌びやかな衣服。少なくとも鉱山で働いていたものたちとは違う。
「死者よ、まだ言葉を紡げるなら目的を言うがいい。紡げぬのならば、私が力を貸してやろう」
ルーワンは弦をはじく手を止めずに言った。
ゾンビ達は腐った肉の糸を引かせながら口を開いた。
「まだ・・・ここにいなければ、なら・・・ない」
「邪魔・・・する、な」
襲いかかってくる様子はないが険悪な雰囲気は拭われない。威圧的な様子にルーワンは怯まずに睨み付けるように弦を鳴らし続ける。
ロキアルドはふと剣を納めてゾンビ達の前に歩き出した。これにはルーワンも驚いたようで目を丸くした。
「何をしている!危ないぞ」
「何もしない。通してくれ。泣いている子供の声が聞こえるんだ」
そういわれてルーワンも耳を澄ませた。複数のゾンビのうめき声の中で確かに子供のすすり泣きが混じっていた。
「その子に・・・手出し、するな!」
一体のゾンビがロキアルドに向かって手を伸ばした。しかし、ロキアルドは剣を抜くことなく、その手をかわした。それを合図に複数のゾンビ達がロキアルドに手を伸ばし始めた。
「ちっ。人が宥めようとしているのに。興奮させて!」
ルーワンは急ぎロキアルドのそばによって弦をはじいた。それと共にゾンビ達の手はロキアルドとルーワンに近づけなくなった。
ゾンビ達の間を駆け抜けていくと中央に守られるように泣いている少女がいた。
「その子に・・・手を、出す、な」
ゾンビ達は慌てたように手を伸ばすがルーワンの鳴らす弦によって近づくことはかなわない。
少女の身体は透けており、すでに亡霊であることがすぐにわかった。弱々しく姿を完全に保つことができないようで足下から薄くなり始めていた。ロキアルドはルーワンの方を見た。ルーワンも察したようで微笑する。
「大丈夫。その子は悪意のある霊魂じゃないからたとえ弱い霊であってもこの弦で払われることはない」
ロキアルドは安堵の息を漏らし、再び少女の霊を見た。
「レイラ・・・レイラ・・・レイラがいないの」
少女はだだをこねるように泣いたまま首を左右に何度も振りながら言った。
「ルーワン、死者を呼び出すことはできるか?」
「死者の肉体の一部、もしくは長期間身に付けたものがあれば可能だ」
「一か八かだな。これを使ってみてくれ」
ロキアルドはポケットから青い石のに銀の鎖をつけただけのシンプルなペンダントをとりだした。それは以前ロキアルドがレイラと出会ったとき彼女の遺品として遺族に届けようと今日まで持っていた品だった。
ルーワンは荷物から大きな鳥の羽を取り出した。鳥かどうかも怪しいほどのルーワンの腕の長さほどもある羽だ。ルーワンが手首を使って一回転させるとその羽は光を放った。やがて光の塊となるとルーワンはそれをボーガンに押しつけた。
「長期間つけていたかはわからないってことか。やるだけやってみよう。弓切り鳥よ、汝の翼に死者の魂を乗せて今一度現世に運べ!」
光は矢となってペンダントを貫き打ち砕いた。
光とペンダントの破片は宙に舞い、円を描きながら集結していった。
「どうやら、成功のようだ」
ルーワンの言葉と同時に光の中に青い踊り子の衣装を纏った青髪の女性が立っていた。
「サージャ、遅くなってごめんね。幽霊になってもみんなを助けようとしたんだけど私、何もできなくって。幽霊って思っていたより力がないのね」
青髪の女性・レイラは静かに涙を流しながら泣き続ける少女を抱きしめた。
「みんなもごめんね。ゾンビになってまで私を待っていてくれたのね。でももういいのよ。みんな、私と一緒にこの地に帰りましょう」
ゾンビ達は黙って立っていた。しかし、やがてそれぞれに口を開く。
「レイラが、帰って・・・きた」
「我、らの舞姫が、帰って・・・きた」
「レ、イラ」
同時に崩れ落ちる音が聞こえ始めた。ゾンビ達が次々と倒れ始めたのだ。
「目的を失ったからそこに存在し続けることができなくなったようだな」
ルーワンは弦を鳴らすのをやめてボーガンを下げた。もはや、必要がないと判断したのだろう。
ゾンビ達が全て倒れ、代わりに青白い光がゾンビの数だけ薄暗い森のかなに輝き始めた。
「ありがとう、ロキアルド。あなたが私をここに連れてきてくれたからみんなを助けることができた。本当にありがとう。私はこれからみんなを連れて死者の国へ旅立ちます。もう会うことはないですがお元気で。さあ、サージャ、みんなのために歌って」
「うん、レイラ」
少女・サージャの顔にもう涙はなかった。代わりに満面の笑みが浮かんでいた。
夜空に輝く月の下に丸い粒の星達ができあがるようにサージャの歌声が柔らかに響いた。レイラはそれにあわせて扇子を用いて舞い始めた。青白い光となった団員達も共に舞うように二人の周りを回り始めた。
やがて彼らは月光と同化するように姿を消した。

「さあ、我々の目的は終わった。帰るぞ、ロキアルド」
ルーワンが取り出したのは帰還書だった。ロキアルドは目を丸くしたかと思うとすぐにルーワンに食ってかかった。
「待て!サージャとレイラの件は終わったかもしれないが、シュウレイがまだ山の中だぞ!」
帰還書を使うと言うことはシュウレイを置き去りにしてエルナスへ戻ると言うことである。ロキアルドは当然納得がいかなかった。
「シュウレイ様は今はあのままの方がいいんだ。破天蒼月は氷と月を表す紋章。双方が兼ね備わったあの地は紋章で傷ついた身体を回復させるには格好の場所なんだ。だから、あのままにしていく。回復したらあの方なら自力で戻ってくるから心配するな」
ロキアルドはルーワンの言葉に煮え切らないという表情をありありと見せたが、紋章のことをよく知らないロキアルドはルーワンの言葉を嚥下するしかなかった。
しかたなく、帰還書を受け取るがすぐに使うことができず、もう一度、シュウレイのいる崖を見下ろし、帰還書を破り捨てて発動させた。
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Date:2007/03/13
Trackback:0
Comment:3

Comment

* うぅ;-;

とりあえずみんなが成仏できたようでよかったです><
シュウレイが癒えてからの展開も楽しみです!
でも私なら外見だけで判断しゾンビ両断しちゃいそう(ぁ
2007/03/13 【Rokia】 URL #/5LHBRow [編集]

* 更新おつかれさまです

あうぅ、やっぱり悲しいお話ですね;;
しかし、皆がゾンビ生活から解放されてよかったです。
金歯目当てでゾンビ乱獲する怖いサンタさんの餌食にならないで済みましたね><

次のお話も楽しみにしています♪
2007/03/13 【リルカ】 URL #zQwTZWAg [編集]

* こめんとありり

>ろきあ
斬っちゃダメですよ@@;
なんて酷い人でしょう><。

>リルカさん
リルカさんも乱獲しちゃダメ@@;
ちょっと悲しいお話しでしたけど楽しんでいただけたのなら良かった^^
2007/03/13 【シュウレイ】 URL #NrhtwNsQ [編集]

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