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破天蒼月

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□ 破天蒼月(小説) □

月は満ちて

月は満ちてやがては欠けていく。
想いを寄せる太陽に憧れてその身を削るかのように。
やがては闇に包まれる世界を暗示しているのか。はたまた新たな命の誕生と存在する命の灯火が消える両方を意図しているのか。




テーブルを滑るように流れたものは何だったのだろうか。幼い私には未知の物体で理解できなかった。
ただただそこにあったのは言いようのない恐怖だけだった。
「隠れてなさい、シュウレイ」
母が私を隠し部屋へと突き飛ばし扉を強く閉めた。
鉄の扉は冷たく私と母を隔ててがんとして開かず何者も受け付けず扉に触れる私の手だけが冷えた。震える私の手に扉を叩く力はなかった。
耳に残る布を切り裂くような音。
母は一体どうなったのだろうか・・・




「シュウレイ、そんなところで寝ているの?器用だね」
ぼやけた視界に移るのは緑一面。人影はない。
それもそのはず私が寝ていたのは木の上で人一人がやっと乗る程度の場所だ。
声の主は足元にいた。
「キカ様」
新緑に負けない鮮やかな衣をまとった女性は春を背負ったような優しい笑顔で私を見つめていた。彼女はキカ様、血はつながらないが私の後見人として面倒を見てくれた方だ。そして私の家である蒼家の同盟、翠家の跡取りでもある。
「また家を飛び出してきたの?ダメよ。蒼家当主の貴方がそのようでは。・・・といっても気持ちがわからないではないわ。まだ貴方は12歳ですものね」
キカ様は私から視線を外した。その視線の先には走り回る私とそう年の変わらない子達がいた。
「・・・わかってはいるんです。まだまだ未熟ゆえ学ばなければいけないことは山ほどあると言うことは」
木によしかかり天を仰ぐ。空は抜けるように青い。
流れる雲が私の瞳をよぎっていった。
「しかし、蒼家は私とメイシャオしかもういない。そしてメイシャオはまだ幼いため紋章を受け継げるのは私だった。ただそれだけです。私が願うのは一族再興ではなく自由に生きること・・・なんですけどね」
「自由・・・か。そうね、紋章継承者は一族の頭。自由はもっとも得難い場所にいるわね。シュウレイ、貴方を継承者として選んだ私を憎んでる?」
木から降り立ちキカ様の前に立つ。視界は再び緑に染まった。
「いいえ、憎むなどとは・・・それに私は明日にも自由を手に入れるつもりです」
私の謎の笑みにキカ様は不思議そうな顔をした。だがそのあとにすぐに鈴が鳴るように小さく笑った。
「なあに?また何か企んでいるの?」
「ええ。今日一日授業をさぼってここで寝ていたおかげでいい案ができました」
私も微笑み返す。




翌早朝、静かな朝だ。
目の前の騒音さえなければ。
「シュウレイ様!一体何をお考えですか!」
吼える爺、もといフォンロン。我が家の執事だ。
最近年をとったせいか涙もろく、そして今日も泣いている。
大粒の涙とよく表現するが彼の場合もはや濁流のごとくである。
「フォンロン、全く帰ってこないわけではなくたまには顔を見せる。旅ぐらいいだろう。昔と違って治安もいいし、旅行みたいなものだ」
ずた袋を片手に護身用の剣を腰に差し旅支度を進める。
「いいえ。いいえ。このフォンロン、絶対に反対です!昔この蒼家の結界を破って魔物が進入してきたことをお忘れですか。それによって生き残ったのはあなた様とメイシャオ様だけではないですか!」
「ならば、家にいたって一緒ではないか」
壁に掛けていた外套を着込むが何かがひっぱらさる。見るとそこにはしがみつくフォンロンがいた。はげ上がった頭だけが見えて顔はすっぽりと外套に埋めている。
「少なくとも結界があなた様を守ってくれます。ですから旅などおやめください!」
私は外套を強く引っ張った。その反動でフォンロンは仰け反り尻餅をついた。大きな風を切る音と共にマントを背負う。
旅支度は完了した。
「フォンロン、私が旅に出るのは蒼家当主がそのままではいけないと思うからだ。もっと世の中に出て見聞を広め、ゆくゆくは一族を反映していくために学んでいかねばならない。そのための修行の旅だ。わかってくれ。連絡用にマオルをつれていく、それでいいだろう?」
先ほどのずた袋に一匹の黒猫が乗っていた。そして得意げに前足をなめて髭をこねる。
「マオルはこう見えて優秀な魔法生物だ。連絡ぐらい分けないさ。それでは行ってくる。留守は任せた」
「シュウレイ様~~おまちを~~」
疾走する若い四肢に年老いたフォンロンが追いつくはずもなく、私は緑豊かな大地を駆けていった。




月は満ち若い当主が今自由を得て旅に出る。
欠けゆくものを今は知らずただひたすらに満ちた喜びを胸に抱き、大地を力強く蹴り進んだ。


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Date:2005/10/10
Trackback:0
Comment:2

Comment

* さすが~^^

さすが・・・私が書く小説なんかより断然面白い^^
これからの展開にも期待だな^^
シュウレイなら挿絵とかも書いたらいいかも。
私のキャラは登場したりするのかな?
2005/10/13 【ロキア】 URL #/5LHBRow [編集]

* いきなりですが

すごい。書けそうにない。俺なんかにゃ。
最初だけ読みましたが、うますぎる。
もしかしたら有名サイトになれるかもしれませんよw
2008/09/08 【takashy】 URL #-

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